第4回 テンプレートのさじ加減

2016年10月26日


 


  
 
こんにちは、作曲家の望月将宏( @receptorjp )です。

 
今回は DAWのテンプレートの話です。
僕は、Apple社のLogicとMagix社のSamplitudeを主に使用しています。(他の方と共同作業するために、Avid社のProtoolsやPresonus社のStudio Oneなどを使用することもあります)。
Samplitudeはミキシングやマスタリングだけに専念する時に使い、普段の制作では大抵Logicを使用しています。

毎日24時間、Logicが立ち上がっていないことはほとんどなく、「曲を作ろう」と思ったらすぐにLogicに思いついたメロディーをシンセのピアノの音で録音して作っていきます( 前回コラム参照)。

さて、そのLogicですが、僕は いつも同じテンプレートファイルから制作を開始しています。Logicに付属してくるテンプレートファイルではなく、自作のテンプレートファイルです。

なんでテンプレートファイルを作っておくの?


僕は、毎回立ち上げるごとにトラック数0の何もないファイル、「空のソングファイル」を使うのでは、効率が悪いと考えています。

想像してみてください。「空のソングファイルを使う」というのは、DAWがなかった時代で言うのなら、ハードミキサー・アウトボードなどを含めた全ての配線を一曲完成するごとに全て切って、倉庫に機材をしまい込み、次の曲を作るときには空っぽのスタジオに入り、「さて、機材の運搬と配線から始めるか」という状態で作業開始するようなものだと思いませんか?

とは言っても、逆に毎回全く同じ機材構成、音色で制作するのも味気なく、作る側としても聞く側としてもつまらないかも、と思いますよね。

DAW付属のジャンル別・目的別のテンプレートも時には便利かもしれませんが、万能ではありません。自分らしさを出しやすいか、自分にとって使いやすいか、という観点からも微妙なところです。


絶妙なさじ加減のテンプレートとは?


では、「ちょうど良いさじ加減の万能なテンプレート」とはどのようなものなのでしょうか?

答えは人それぞれだと思いますが、今の僕にとってはおおよそ以下のようなものがそれに該当するのかなぁ、と考えています。

  • オーディオトラック64トラック
  • ソフトシンセのトラック128トラック(全トラックにexs24mkIIを、音色をロードせずミュートした状態で立ち上げておく)
  • Aux1~7には、空間系エフェクトを7種類あらかじめ立ち上げておく
  • オーディオトラックとソフトシンセのトラックには、Logic標準のEQとDynamics系エフェクトをあらかじめインサートし全てバイパスしておく
  • Bus1~7のセンド量を設定できるようにあらかじめ設定しておき、センド量を全て0に
  • ハードシンセのMIDIトラックはハードウェアの台数分用意しておき、音色をLogic上から選択できるようにしておく
  • ハードシンセの音を全て一度で録音できるようにオーディオトラックへのインプットの一部を設定

説明用に表示トラック数を大幅に減らしてありますが、おおよそこんな感じです(画像をクリックすると拡大します)。


他にも、ALTバスを設定しておき、 生音録音時に必要な音だけをプレイヤーさんに送ることができるようにしてあったり、空のBusをあらかじめたくさん用意しておいたり、と、工夫しているポイントはたくさんもあるのですが、 簡単に言えば、大型のコンソールとレコーダーに似たものを事前に用意しておき、そこに最小限のアウトボードやシンセをあらかじめ繋いだ状態にしてあるということです。

ソフトシンセのトラックにexs24mkIIを立ち上げてあるのは、短時間で仮オケを作るときに動作が軽くて使いやすいからです。ジャンルを問わずに使えるよう、ハードシンセの定番音色を1000音色以上サンプリングしてすぐに使えるようにしてあるから、というのもその理由です(これについてはいずれ語るかも)。

EQやDynamics系エフェクトをLogic標準のものにしてあるのも、やはり手軽さと動作の軽さが一番の理由ですね。あと、他の人と共同作業する時に互換性の問題が生じにくいから、という理由もあります。

Auxに立ち上げてある空間系エフェクトもLogic標準のものがメインですが、UAD-2のLexicon224やEMT140なども含まれています。
 

自由な発想と素早さを両立させよう


このように準備しておくと、トラック数0の何もない段階からスタートしたり、センドバスをアサインしたりするところからスタートするよりも、圧倒的に素早く制作することができます。

言うまでもなく、制作中にテンプレートにないソフトシンセやエフェクトを立ち上げるのは日常茶飯事です。普段とは異なる接続方法を試すことも頻繁にあります。そもそも生音だって結構録ります。

ただ、毎回「空のソング」からスタートしたり、「あらかじめ用意されているジャンル別・用途別のテンプレート」からスタートするよりも、最小限必要なものが用意されていることで圧倒的に素早く作業できる、しかも音楽的な作業に専念して制作することができる、便利なテンプレートなのです。

ちなみに、Samplitudeでもオーディオトラックのみに絞り込んであるものの、同じように64トラックを事前に用意し、コンプ・EQの設定やAuxやBusの設定をしてあります。
最近、制作に使うことが増えてきたStudio OneでもLogicとほぼ同じテンプレートです。

毎回「空のソング」や「DAW付属のテンプレート」などから作っていた方、あなただけのテンプレート作成をお試しあれ!

望月将宏

作曲家・編曲家・キーボード奏者
J-POP・アニメ・アイドル・演歌など歌もの楽曲の制作から、展示会用音楽やゲーム用音楽などインスト楽曲の制作まで幅広く行っている。また、シンセサイザーでの音作りが得意であることを活かし、シンセサイザーのプリセット制作やサンプリング音源制作にも参加する。