第7回 コントロール・ユー?その1

2016年11月16日


 




こんにちは、作曲家の望月将宏(@receptorjp)です。

皆さんは、「音楽制作で使うコントローラー」と聞いたとき、何を思い浮かべますか?
大きく分けると次の2つのいずれか、ではないでしょうか?

  1. 演奏時に使用するコントローラー
  2. ミックス時に使用するコントローラー


今回は「1.演奏時に使用するコントローラー」について(言うまでもなく「シンセ」の演奏時のコントローラーについて)、少し語ってみたいと思います。


演奏時に使用するコントローラーとは?


演奏時に使用するのは、主にシンセのパラメータを操作するためのコントローラー、です。シンセ内部のフィルター、アンプ、LFOなどをリアルタイムに変化させるためのものですね。シンセのつまみ、ピッチベンド、モジュレーションホイール、サステインペダル、ボリュームペダル、ブレスコントローラーなどがそれに当たります。

最大の特徴は、演奏「しながら」操作するものである、ことでしょう。

となると、やはり一番使われるのは両手がふさがったままでも操作できるタイプのコントローラーです。次のような例が挙げられます。

  • ピアノなど鍵盤系の音を両手で弾きながら、足でサステインペダルを踏んで音を伸ばす
  • ストリングス系やパッド系の音を両手で弾きながら、足でボリュームペダルを踏み込む
  • 左手でコード、右手でベルなど、左右の手で別々の音色を演奏しながら、持続音である左手のコードの音色だけボリュームペダルで音量とカットオフを変化させる
  • ブレスコントローラーで、モデリング音源のサックスに対し息を吹き込む量を変化させる

 
両手がふさがったまま操作するコントローラーでは、どちらかというと、どうしても必要なもの、を操作することが多いような気がします。

一方、片手だけで演奏する場面では、片手で演奏しつつ、片手でコントローラーを操作、ということも行いますよね。こちらの例には以下のようなものがあります。
 

  • モノフォニックのシンセリード系の音を片手で弾きながら、ピッチベンドでギターのベンディング(チョーキング)のような効果を、更にモジュレーションホイールでピッチLFOの量であるビブラートをかける
  • パッド系の音を片手で弾きながら、シンセのカットオフのつまみを操作し、徐々に音を明るくしていく


シンセのつまみを操作しながら演奏する場合は、パネルに出ているシンセのパラメータ全てを好き勝手操作できるわけですから、なんでもアリですね。特にライブの時には、その場の気分や雰囲気に合わせて、ピッチからフィルターから何から何までメチャクチャにいじって、盛り上げたりもできます。

演奏しながら片手で操作するタイプのコントローラーでは、なくても一応演奏はできるものの、あれば圧倒的に表現力豊かな演奏ができる、というタイプのパラメータを操作することが多いように思います。


コントローラーへの思い入れ


第一回のコラム(第一回コラムのページへ)で語ったように、僕はエレクトーンからキーボード演奏を始めました。だからこそ、コントローラーって重要なんです。エレクトーンは、以下のようにたくさんのコントローラーを搭載していますから。
 

  • 右ひざのところにはニーレバーと呼ばれるレバー型のコントローラー(サステインペダルの代わりなど)
  • 右足を乗せるところにはボリュームペダル
  • ボリュームペダルの左右には軽く蹴って使うフットスイッチが2つ(音色切り替えなど)・ボリュームペダルの横にはもう一つのペダル(ピッチベンドの代わりなど)


これだけのコントローラーが詰まっているのに、椅子に座って演奏している状態で全て無理のない姿勢で操作できます。素晴らしいと思いませんか?
エレクトーンのコントローラーなんて見たことがないよ、という方。今度、是非楽器店でエレクトーンを触り、機能的に優れた配置になっていることを確認してみてください。

もちろん、鍵盤にはイニシャルタッチ(ベロシティーによって音量・音色を変化)とアフタータッチ(押し込むことによって更に音量・音色を変化)が搭載されていて、更に機種によってはシンセにはないホリゾンタルタッチ(鍵盤を左右に揺らすことで音程を揺らす機能)まであるので、本当に多種多様な表現が可能です。いずれも「リアルタイムにコントロールできる」というのがポイントですね。

さて、エレクトーンでなく、シンセで演奏する時も、僕はリアルタイムにコントロールしながら演奏することにこだわります。

なぜか? 極端な例で考えるとイメージしやすいと思います。
ピアノを演奏する時、ダンパーペダルを踏みこんだ演奏を想定しているのに、踏み込まないで演奏しなければならない、としたら??

どうしても演奏に感情を込めにくくなってしまいますよね。他のコントローラーでも全く同じです。イメージした演奏と実際に出てくる音があまりにも違うと、演奏しにくくなってしまいます。

もちろん、演奏をDAWに録音した後で、後からコントローラーの情報を追加することもあります。その方が良いことも当然あるでしょう。物理的にそうせざるを得ないこともあります(手が3本ないと無理、など)。でも、演奏と同時の方が良い味を出せることが多いので、可能なものについてはなるべくリアルタイムにコントロールします。

今も昔も変わらず、シンセの音は時として「無機質な人間味のない音だ」と言われることがあります。確かに、そういう効果を表現の一つとして狙うこともできますから、そう言われた時には胸を張って、「その通り!シンセなら機械のような無機質な演奏もできるんだぞ!すごいだろ!」と言いましょう。

でも、その後で、「生楽器と同じように有機的で人間味溢れる演奏をシンセでできるよ。そういう演奏も楽しんでね!」と言ってあげてください。

どの鍵盤を押した、という情報と同時に記録される音の強さと長さだけでも人間味を出すことはできますが、コントローラーを積極的に使うことで、より人間的な演奏になると僕は考えています。いずれにしても、聞く人を魅了するような演奏をしたいと思ったら、僕の場合は指先だけでなくコントローラーにも手や足が動いてしまうのです。

次回は「2.ミックス時に使用するコントローラー」について、語ってみようかなと思っています。

ではでは。

望月将宏

作曲家・編曲家・キーボード奏者
J-POP・アニメ・アイドル・演歌など歌もの楽曲の制作から、展示会用音楽やゲーム用音楽などインスト楽曲の制作まで幅広く行っている。また、シンセサイザーでの音作りが得意であることを活かし、シンセサイザーのプリセット制作やサンプリング音源制作にも参加する。