第9回 ハリーとクロードの周波数

2016年12月11日


 




こんにちは、作曲家の望月将宏(@receptorjp)です。

皆さんがよく使うサンプラーはどれでしょうか?
僕の場合は、Apple社のexs24mkII(Logic付属のもの)( 外部サイトへ)とNative Instruments社のKontakt( 外部サイトへ)です。

でも、これはある程度本当である程度ウソです。ドラムのライブラリーを鳴らす時は、Native Instruments社のBattery( 外部サイトへ)を最もよく使います。あと、ハードサンプラーである、ensoniq ASR-10( 外部サイトへ)とe-mu E4XT ULTRA( 外部サイトへ)は、今でもそれなりの頻度で使用しています。

つまり、 汎用ソフトサンプラーに限って言えばexs24mkIIとKontaktばかり使用している、というのが、正確なところです。今回はその汎用ソフトサンプラーの話です(ややこしいので、わざわざ汎用とつけるのはここまでにしておきましょう)。


なぜよく使うソフトサンプラーが2つあるの?


理由は大きく見て2つです。

  1. いずれかにしか対応していないライブラリーがあるから
  2. エディット機能や使い勝手に違いがあるから


それぞれ今日も徒然なるままに書いていきたいと思います。


1.対応ライブラリーの違いについて


市販のライブラリーには、Kontakt専用のものが多いという印象です。Logicという特定のDAW専用のexs24mkIIにだけ対応させるよりも、AUプラグインやVSTiプラグインとして様々なDAWから呼び出せるKontaktに対応させた方が、より多くの人に使ってもらえる、ということが一番の理由でしょう。また、後述の2とも関係しますが、豊富なエディット機能で縦横無尽に音作りできることもその理由の一つでしょう。

一方、exs24mkIIにしか対応していないライブラリーも多く存在します。こちらも2の内容になりますが、exs24mkIIは必要にして十分な機能をうまく絞り込んだサンプラーであることから、パッチを作るのが容易です。また、exs24mkII形式のパッチは、他の多くのサンプラーでも読み込むことができます。そのため、exs24mkII形式でリリースしておけば、最小の手間で最多の音源に対応できる、ということになります。

とは言っても、他のサンプラーで読み込んだところでそのまま楽器として使えるパッチになるということはあまりなく、かなりの手直しは必要です。exs24mkII形式のライブラリーは、やはりexs24mkIIで読み込んだ時に最良の楽器になることがほとんどです。

ライブラリー制作側から見れば、KontaktがDAWを問わず使われていて機能も豊富で万能、exs24mkIIは他のソフトサンプラーでのインポートも含めて考えれば万能、ということですね。

それならば、「ライブラリーを使う側はKontaktとexs24mkIIの両方を持っていれば最高じゃないか」というのが、僕の考えです。


2.エディット機能や使い勝手の違いについて


1が市販のライブラリーをそのまま使うことを考えた上での理由だとすれば、2はライブラリーをエディットしたり、自分でライブラリーを作ったりする場合の話です。

まずexs24mkIIについては、前述のように必要にして十分な機能がうまく絞り込まれたサンプラーです。 伝統的な減算式シンセと同じ、オシレーターの音をフィルターとアンプで加工する、そこにLFOやコントローラーによる経時変化をつけることができる、という 単純明快なエディット機能が備わっているのです。
しかも、ワークフローがよく練られています。音作りの最初に当たる、波形を各鍵盤に割り当てる部分、つまりシンセでいうオシレーター部分だけを別の画面にまとめ、それ以外のエディット部分を常にメインウインドウに表示する、という画面構成になっていることから、 オシレーターを決めてしまえば、後は常に表示されているメインウインドウで好きなように音作りができます

以前のコラム( 第5回コラムのページへ)で触れたように、AutoSamplerでサンプリングしたハードシンセの音は、基本的にexs24mkIIで使用します。ハードシンセ側で十分音作りしたものをサンプリングすることが多いため、ベロシティーへの感度やフィルターやエンベロープの調整など、 素早く必要なパラメーターにアクセスできるexs24mkIIが最適なのです。

exs24mkIIのメインウインドウです。オシレーター以外のパラメーターのほとんどがここに集まっています(画像をクリックすると拡大します)。



一方、Kontaktはとにかく 機能が豊富です。exs24mkIIにある機能は恐らくほぼ全て持っており、例えば フィルターの種類が豊富だったり、 フィルターを複数同時に使えたり、 エンベロープをよりたくさん使えたり、エフェクターも内蔵していたり、と至れり尽くせりです。また、 エンベロープのキレが素晴らしく、例えばリリースタイムをゼロにすると、あまりにも急に音が消えすぎて、ノイズが出てしまうこともあるほどです。

このように書くと、Kontaktが常に最高だと思うかもしれません。ただ、機能が豊富すぎるがゆえページ構成が複雑になっており、 多機能さの分、わかりやすさはトレードオフになっています。

Kontaktのウインドウの様子です。とにかく多機能で痒いところまで手が届くのですが、短時間で手早く音作りをするには不向きなこともあります(画像をクリックすると拡大します)。


何より、他のサンプラーでは簡単に行えることが、意外と簡単には行えないということが多々あります。例えば、 ピッチベンドレンジの変え方、ポルタメントのかけ方、レガートのかけ方、など即座に答えられる人は少ないのではないでしょうか

「ピッチベンドレンジだけはこうやれば設定できるけれど、他はKSPを使う必要があるよ」と即答したそこのあなた! はい、あなたマニア決定です(笑)

いずれにしても、同社のReaktor( 外部サイトへ)ほどではないにしても、 音作りするという観点からは、ギーク向けの楽器という側面が強いという印象があります。いや、僕はKontaktのそういうところが好きなのですが。 じっくりと時間をかけて音作りする時には最高ですね。

で、どっちが優れているの?


「exs24mkIIとKontaktの優劣は?」と尋ねるのは少々愚問というものです。いや、誰も尋ねていないか(笑)。どちらも優れた楽器ですし、これだけ特徴がはっきりとしている2つのソフトサンプラーを使い分けるのは、それほど難しくはないでしょう。

とは言っても、「Kontaktでフィルターを複数使いつつも、exs24mkIIのように手早く音作りしたい」と思うことはありました。過去形になっているのは、僕の中では完全ではないものの、ある程度解決できたからです。

その話は、またいずれゆっくりと書きます。

ではでは。

望月将宏

作曲家・編曲家・キーボード奏者
J-POP・アニメ・アイドル・演歌など歌もの楽曲の制作から、展示会用音楽やゲーム用音楽などインスト楽曲の制作まで幅広く行っている。また、シンセサイザーでの音作りが得意であることを活かし、シンセサイザーのプリセット制作やサンプリング音源制作にも参加する。